経理のやりがいが分かる!経理のプロが教える仕事内容や必要な資格・転職のコツ
更新 / トリセツ編集部
「経理の仕事って楽しいの?やりがいはある?」
「就職・転職するには、やっぱり簿記の資格が必要?」
「勤めた後に恥をかきたくない・・・事前に知っておきたい知識はある?」
これから経理の仕事を探す人や、経理に初挑戦する人にとって、
「経理」は知っているようで、意外と謎に包まれた職種だと思います。
もしあなたが今まさに就職活動中であれば、経理という仕事のやりがいや魅力、将来性、必要な資格・知識、給料(年収)について知っておきたいですよね。
また、すでに経理の仕事が決まっているとしたら、業務が始まる前に、実務に関する基礎知識を身につけておきたいところでしょう!
仕事が始まってから、「えっ、そんなことも知らないの・・・?」なんて言われたくないですもんね(^^;
でも、安心してください!
この記事を読むだけで、絶対に知っておきたい経理のイロハがバッチリ身につくはずです!
というわけで、こんにちは!
経理歴7年。経理、経理人材育成および会計コンサルタントとして働く鳥居です。
今回は初めての経理というテーマで、現場の視点からみた「経理の基本」を紹介したいと思います!
では、さっそくまいりましょう!
経理ってどんな仕事?
まず、あらためて経理とはどういう仕事なのか、そして経理のやりがいについて確認してみましょう。
経理の役割
経理の仕事(役割)はたくさんありますが、
ヒトコトで言うと、ズバリ!
「お金の動きを記録すること」です。
通帳や請求書、領収書などの資料をチェックしながら、コツコツと毎日のお金の動きを記録していきます。いってみれば、会社のお小遣い帳をつけるようなイメージです。
では、なぜ経理はお金の動きを記録しているのでしょうか?
その理由として、主に次の4つが挙げられます。
- 財務状況を把握する
- 経営判断をサポートする
- 決算書を作る
- 資金繰りの管理
図にするとこんな感じですね。
それぞれについて、ちょっと詳しく見てみましょう。
1. 財務状況を把握する
会社が経理にお金を管理させる理由は、とにかく「財務状況」を把握したいからです。
自分たちがどれくらい儲けていて、どれくらいのお金が手元にあるか分からなければ、安心して会社経営なんてできませんよね。
経理がコツコツとお金の動きを記録してくれるおかげで、会社は財務状況を正確に、そしてリアルタイムに確認できるようになります。
2. 経営判断をサポートする
財政状況を一番知りたがっているのは、もちろん社長です。財政状況が分からなければ、社長は事業計画や予算を立てることができません。
そこで経理は、お金の動きを記録し、財務状況としてまとめ上げて、社長に報告します。場合によっては問題点を指摘したり、解決策を求められることもあります。
こうなると、経理も経営陣のひとりっていう感じがしますよね!実際に中小企業の中には、経理が社長の右腕として活躍している会社もけっこう多いんですよ^^
3. 決算書を作る
経理の最大の役割は、「決算書」を作ることです。
「決算書(貸借対照表・損益計算書)」とは、会社の1年間のお金の動きを分かりやすくまとめた資料のこと。会社は年度末に決算書を作成し、報告する義務があります。
実際に決算書を作るのは税理士ですが、決算書づくりには365日分のあらゆるお金の動きを記録した帳簿が必要です。その帳簿をつけるのが、経理の仕事というわけですね!
4. 資金繰りの管理(黒字倒産から会社を守る)
経理には「資金繰り(※)」という大きな役割があります。
会社はどれだけ収益があっても、資金繰りに失敗した時点で倒産です・・・(いわゆる黒字倒産(※))。
資金繰りは経営者が見逃しがちな部分で、実際に倒産する会社の40%以上(これはスゴイ!)が、黒字倒産をしているそうです。
というわけで、もしあなたが経理になったら、「倒産から会社を守る」というきわめて重要な役割を担うことになります!
※資金繰り・・・いくら「収益」があっても、実際に動かせる「現金」がなければ、「支払い(小切手・手形・負債の返済など)」はできません。支払いができないと、金融機関との取引が打ち切られてしまいます。事実上の倒産ですね・・・。このような事態に陥らないために、支払いできるだけの「現金」を管理することを「資金繰り」といいます。
※黒字倒産・・・利益が上がっている(黒字状態)にもかかわらず、資金繰りに失敗して倒産してしまうこと。
経理の主な役割は分かりましたか?
経理は地味な存在ですが、
会社経営に必要なデータをまとめたり、
会社の倒産を防ぐなど、
「実はかなり重要な仕事を任されている」ことを知ってもらえたら嬉しいです^^
では次に、経理のやりがいや魅力をお伝えします!
経理のやりがい
「経理は地味!つまらない・・・」なんて言われることも・・・ぶっちゃけあります(笑)。
たしかに経理は「裏方」なので、営業のように目立つことはありません。同僚に感謝される機会も決して多くはないでしょう。
でも、他の職種では絶対に経験のできない、病みつきになるような「やりがい」もあるんです!
経理のやりがい①経営者視点を経営者より先に味わえる
経理は、会社の財務状況をすべて把握できる唯一の職種です。
会社がいま、いくら稼いでいて、いくら儲かっているのか。資産や負債はどれくらいあるのか。経営状態は健全なのか。そのような財務状況をスミからスミまで知ることができます(会社のお金のことなんて、イケイケのトップセールスマンすら知りません)。
しかも経理は、「社長より先に」財務状況を把握することになります。
まるで「会社経営を疑似体験している」ようなこの感覚は、他の仕事では味わえない、経理だけの醍醐味といえます!
経理のやりがい②会社経営のノウハウを学べる
前述のように、経理は会社のお金をすべて把握しています。そして経営陣は、経理のまとめたデータをもとに、経営方針を判断します。つまり経理は、経営陣がどのようにお金を使うのか、間近で見学することができるんです。
そのため、経理の経験を積むと、「どうやってお金を使うと会社はうまくいって、逆にどうすると失敗するか」ということもよく分かるようになります。
経営ノウハウとは、お金を上手に動かすテクニックのようなものです。そのため、お金の管理人である経理は、経営ノウハウを学ぶうえで最適な職種のひとつといえるでしょう。
経理のやりがい③「お母さん」として会社を守る
会社は、一昔前の家族のみたいなものです。営業が外に出てお金を稼ぐ「お父さん」だとすれば、経理は家を守る「お母さん」。
お母さんって家で忙しく働いているのに、その頑張りを認めてもらえなかったり、旦那さんに大きい顔をされたりしがちですよね。
でも、お母さんが家を守り、子育てをしてくれるからこそ、はじめて家庭は成立するんです。
お母さんの大切さを理解できる人には、きっと経理の役割や存在意義も分かってもらえると思います。不安になったときは、経理の仕事をお母さんの姿に重ねてみると、自然と責任感ややりがいを感じられるはずです。
逆に、経理の辛いところ
経理の仕事は、とにかく地味です。裏方の仕事なので、表舞台に立つことはありません。いくら仕事を頑張っても、そもそも頑張りに気づいてもらえないことがほとんど・・・。
そのため、たとえ他人から評価をされなくても、黙々と自分の責任を果たせる「根気」が必要になります。
就職後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、経理の辛い点についても、しっかり覚えておいてくださいね。
では続いて、経理に向いている人・向いていない人について解説します。
経理に向いている人・向いていない人
経理は「特殊な能力」を必要とする仕事ではないので、前提として、向き・不向きはあまり関係ないと思っています(やる気さえあれば誰でもできる!)。
・・・ですが、経理仲間の意見や個人的な経験をふまえ、
①たぶん向いている人
②たぶん向いていない、または絶対に向いていない人
を挙げてみました。あくまで参考程度にチェックしてみてください(^^;
たぶん向いている人
- 物怖じしない人
- シミュレーションゲームが好きな人
経理は社内・社外問わず、色々な人と話す機会があります。とくに顔も知らない取引先と話すのは難しいことですが、分からないことを質問せずに放置していたら、間違いなくトラブルに発展します。そのため、物怖じせずに質問できる人は、経理に向いてると思います(経理以外も向いてると思います)。
また、経理は「経営者的視点」や「計画性」が必要とされる仕事なので、シミュレーションゲーム感覚で楽しめる人は、割と長続きすると思います(実際にシミュレーションゲーム好きの経理って多いんですよね)。
たぶん、または絶対に向いてない人
- 営業肌の人
- 口の軽い人
経理は裏方であり、他部署の人から注目されることも、褒められることも滅多にありません。そのため、いわゆる「営業肌」の人にはあまり向いていないと思います。
それから、「口の軽い人」は絶対に向いていません。経理はほとんどすべての財務情報・個人情報を扱います。万が一情報を漏らせば、解雇どころか、罪に問われる可能性すらあります。そのため、口の軽い人は絶対にやめておきましょう。
では続いて、気になる「経理の将来性」についてお伝えしますね。
経理はなくなる?経理の将来性
「AIの台頭で経理の仕事はなくなるって聞いたけど・・・」
「経理に将来性はあるの?」
たしかに「AI技術が進歩すると、経理の仕事はなくなる」といわれることがあります。もし、それが事実だとすれば、わざわざ将来性のない仕事に就きたくありませんよね。
でも、大丈夫です!結論からいうと、もちろん経理はなくなりません。経理がいなくなったら会社がつぶれちゃいますからね。
そもそもAIに実現できる(と期待されている)のは、「入力作業」です。入力作業は経理にとっても「ムダな仕事」に分類されるので、むしろ「早くAIに代わってほしい」と願う経理の方が多いくらいだと思います。
というより、現状でも入力作業をアウトソーシングしている会社は少なくないので、個人的には「それがAIに代わるだけ」というイメージです。
経理の本業は、どちらかというと↑の部分です。
面倒な仕事が減れば、経理はより生産的な仕事に集中できるようになります。もはや地味な作業屋とは言わせません(笑)!
このように、AIの台頭はむしろ「会社における経理の価値を高めてくれる」はずです^^
それでは次に、就職活動中に戸惑いがちな「経理の種類」について解説します。
経理の種類
経理には、財務や会計、事務といった類似した職種があったり、また同じ経理であっても、会社の規模によって仕事内容が大きく異なったりします。
というわけで、ここで一度、経理の種類について整理してみましょう。
経理と財務の違い
会社のお金に関わる業務には、「会計」と「財務」があります。そして「経理」は「会計」の一部に属します。では、「会計」と「財務」の違いって何でしょうか?
「会計」とは、会社の使用したお金・取得したお金を管理することです。日々のお金の動きを記録し、データとしてまとめて、会社の経営状態を把握することが会計の目的です。
一方で「財務」とは、これから会社が使用するお金を管理することです。会計データをもとに、将来の資金調達や資産運用についてプランを練ることが、財務の主な目的です。
大手企業であれば会計・経理・財務などが細分化されていますが、一般的な中小企業ではこの辺りがかなり曖昧です。経理が会計・財務に深く関わることもよくあります。
経理と事務の違い
事務職は電話対応をしたり、書類を作成したり、営業や総務のアシスタントを行うことが主な仕事です。
もちろん経理と事務はまったく違う職種ですが、中小企業では線引きが曖昧になっているところも珍しくありません。
ということは、経理が事務の仕事を担うことも多々あります(場合によっては、総務や労務の仕事を兼任することも!)。
経理は専門職ですが、とくに中小企業に勤める場合は、少なからず「オールラウンダー」としての役割が期待されるのは確かです。
面倒くさい・・・と感じるかもしれませんが、色々なスキルを短期間で習得できるので、キャリアアップにはピッタリ!と考えることもできますよ(^^
会社の規模によって仕事内容は全然違う
会社の規模によって、経理の業務はまったく違います。それぞれの役割の違いを確認しておきましょう。
大企業
大企業には経理部があり、さらに経理部も決算、財務、税務担当などに細かく分割されています。
そのため、大企業の経理は業務がものすごく限定的です。ひたすら給与計算をしたり、特定の部署の現金管理だけをする仕事もあります。
前述のような経理のイメージとはちょっと違うかもしれませんね。
中小企業
経理担当者の人数が少なく、経理が担当すべき業務をすべて行います。また、総務・労務・事務などの境界があいまいで、経理以外の仕事を兼任することも珍しくありません。
大企業とは違い、オールラウンダーとしての経理スキルが求められます。
外資系企業
外資系企業でも、お金を管理するという基本的な概念は変わりませんが、「本社用の決算報告」と「国内用の決算報告」を別々に行わなければならないという決定的な違いがあります。もちろん、ビジネス英語力(特に会計業務に特化した英語力)も必須です。
さて、次に「経理の求人・転職」について、もう少し具体的に見ていきましょう。
経理の求人・転職について
「経理にはどんな資格や知識が必要なの?簿記は取った方が良い?」
「未経験じゃ転職できない?どれくらい経験があれば『経験者』っていえるの?」
「経理の年収は?給料っていいの?」
など、経理の求人や転職に関する悩みってたくさんありますよね。そこで、あなたの悩みや疑問にひとつずつ答えていきたいと思います!
簿記は持っていた方が良い?他に必要な資格は?
経理といえば「簿記」ですよね。そのため、「簿記は持っていた方がいいの?」という疑問は必ずあると思います。
結論からいうと、「日商簿記3級」は持っていた方が良いです。
経理の仕事には、簿記の知識が必要です。個人的には「簿記の資格はなくても、知識があればOK」と言いたいところ・・・。
でも、就職・転職のことを考えると、どうしても「資格の有無」が考慮されてしまいます。たとえ簿記の知識を持っていて、経理として活躍できる能力があるとしても、簿記の資格を持っていないと理由で書類選考すら通過できない可能性もあります。
でも逆にいえば、簿記の資格さえ持っていれば、少なくともそれを理由に落とされることはありません。大事なのは、とりあえず面接までこぎつけることです。
実務的には3級レベルの知識があれば問題ないので、できるかぎり「日商簿記3級」を取得することをオススメします!
その他の資格について
「簿記」は仕訳をするために必要な知識ですが、経理全般の実務能力を測る資格として、次のようなものがあります。これらの資格を持つことで、面接でアピールできる機会が増えるかもしれません。
給与計算検定
給与計算業務に必要な基礎知識、法的知識、さらに実際の給与計算能力を測る検定です。給与計算は経理の仕事の中でも比較的「ヘヴィー」なものに分類されるので、即戦力アピールにつながるかもしれません。
経理事務パスポート検定(PASS)
経理・財務⼈材育成事業の一環として、日本CFO協会と人材派遣会社パソナが共同運営する資格検定。
人材派遣会社が協力していることもあり、かなり実務に特化した資格といえます。1~3級までありますが、2級まで取得すると、経理の仕事の多くをカバーできます。
e-ラーニング形式なので、スマホでも勉強できるのが嬉しいポイントですね^^
経理初心者にはけっこうオススメの資格だと思います。
経理・財務スキル検定(FASS)
PASS同様に、経理・財務⼈材育成事業の一環として、日本CFO協会(経済産業省の委託)が運営する検定試験です。試験は資産・決算・税務・資金の4分野から構成されており、経理に関するあらゆる知識が試されます。
FASSには等級制度の概念がなく、得点に応じてA~Eランクに分類されます。最低でもCランク以上でなければ、あまりアピールポイントにはならないかもしれませんね。
ただし、内容的にも比較的高度なので、経理未経験者というよりは、すでに経理として働いている人が目指す資格といえます。
ビジネス会計検定
財務諸表の作成や分析力を測るために、大阪商工会議所主催が運営する検定試験。従業員はもちろん、経営者や重役でも取得を目指す人が多い試験です。
経理としてすでに経験を積んだ人が、さらなるステップアップとして取得するのにちょうどいい資格ですね。
未経験でも転職できるの?
未経験者でも、もちろん経理に転職できます。でも、(経理に限ったことではありませんが)未経験者の転職はやはり20代が中心で、30代になると採用率はガクッと下がってしまいます。
20代の転職
20代の場合、年齢によるマイナス評価はほとんどありません。たとえ前職がまったくの別畑だとしても、前職の経験をうまくアピールできれば(つまり前職の経験が経理にも役立つことを主張できれば)、高評価につなげることができます。
ただし、簿記の資格は必ず取得しておくようにしましょう。
30代の転職
30代未経験の採用は、正直なところ厳しいです。ただし、経理の中でもハイクラスの資格を持っていて(簿記1~2級、FASS、PASSなど)、実務経験はないけれど即戦力として働けることをアピールできれば、採用のチャンスはあります。
また経理の資格以外にも、エクセルを高度に使いこなせる場合には、高評価につながることもあります。
事務職経験者の転職
経理として未経験であっても、事務職に勤めていて、経理の仕事を部分的に任されていた場合には、その経験をどんどんアピールしましょう。
事務職は経理につながる部分も多く、たとえ30代であっても、事務職として豊富な経験を積み、さらに経理の仕事を一部でも担当していた場合には、十分に採用基準を満たせる可能性があります。
アルバイトで未経験から経験者に
未経験者でも経理の仕事につくことはできます・・・が、問題は、そもそも「未経験OK」の正社員求人がかなり少ない点です・・・。
そのため、もし経済的余裕があれば、まずはアルバイトから始めてみるのもアリです。
実際に私自身も、スタートはアルバイトでした。アルバイトで経験を積み、その後「経験者」として転職を果たしています。
経理は専門職ということもあり、一般事務に比べると、アルバイトであっても時給は高めに設定されています。フル出勤すればそれなりの給与にはなるため、本気で経理を目指している方は、アルバイトも視野に入れてみましょう。
どれくらいの経験があれば「経験者」といえる?
「経験者」の定義は難しいところですが、個人的には「2年以上の経験」があれば、経験者を名乗って問題ないと思います。
経理の仕事は、前述のように1年を通じてさまざまな業務を担当します。そのため、最低でもルーチンを「2周」すれば、経理経験があるとアピールできるはずです。逆に「1周」ではどうしても物足りないので、経験者とは言いづらいかな・・・という印象です。
未経験者が身につけておきたいスキル
未経験者であっても、最低限身につけておいた方がいいスキルはあります!
1. 簿記3級の知識
前述のように、仕訳業務には簿記の知識が必要不可欠です。正直にいうと・・・少なくとも3級程度の知識がないと、教える側も「面倒だなぁ」と感じてしまうかもしれません。
逆に簿記3級の知識があると、比較的スムーズに業務に取り組むことができ、早い段階で仕事に慣れることができると思います!
2. パソコンスキル(特にエクセル)
経理の業務の多くは、パソコンを使って行います。最低限のパソコン操作ができることはもちろんですが、とくにエクセルのスキルがあった方が、仕事ははかどります。
3. 電話対応力
経理は取引先に電話をすることがよくあります。顔も知らない相手と電話越しに話すのはなかなか難しいことですが、経理の対応次第では、せっかく営業が汗水たらして築いた信頼関係を崩してしまうこともあります。
そのため、最低限のビジネスマナーやコミュケーション能力は身につけておくようにしましょう(とりあえず素直で愛想が良ければ、相手を不快にさせることはありません!)。
4. 他人を怒らせない話し方
意外かもしれませんが、前述のように、経理には「コミュニケーション能力」が必要不可欠です!経理はお金を管理する立場にあるため、取引先だけでなく、社内でも頻繁に人と話す機会があります。
ただ、「コミュニケーション能力が必要」といっても、なにも「友達100人作りましょう」といっているわけではありません(笑)。大事なのは、「他人を怒らせない話し方」ができることです。
たとえば、営業が経費精算書を提出してくれない場合。「早く出してくださいっ!」と相手を責めても、気まずくなるだけです(別に経理が悪いわけじゃないんですけどね・・・)。
そんなときは、
「お疲れ様です。大変そうですね・・・大丈夫ですか?」
と様子をうかがい、ちょこっと会話をしてから、
「お忙しいところほんっとに申し訳ないんですが・・・実は経費精算書の締め切りが今日までで・・・協力してもらえると嬉しいんですけど・・・お願いできます?」
みたいに下から頼んでみると、けっこう効果的です。
トークで相手を楽しい気持ちにさせるのは難しいことですが、少なくとも相手を不快にさせないように心がけることは、決して出来ないことではありません。
ようするに、「自分が言われてもイラッとしない話し方」を心がければ、自然とコミュニケーション能力は上達するはずです^^
経理の年収・給料は?
経理の平均年収は「500万円」くらいだといわれています。一般事務職よりやや高く、営業よりは低いといったところでしょうか?
もちろん、他の業種と同様に、大企業の方が年収は高く、また年齢が上がれば上がるほど、給与も高くなる傾向があります。
女性ばかり?経理の男女比の実態
「経理=事務」というイメージが強いせいか、経理職は「女性ばかり」と勘違いする人もいるみたいです。でも実際には、男性が55%、女性が45%くらいの割合であることが分かっています。
経理はいわゆる専門職に分類されるため、男性の方が若干多い傾向にあるみたいです。とはいえ、ここまで男女差の小さい職種も珍しいですよね。
もちろん会社によって男女比は異なりますが、基本的に男性・女性を問わず活躍できる職種と考えて問題ありません!
履歴書・職務経歴書のポイント
履歴書、職務経歴書では、次のようなポイントをアピールできると効果的です。
資格・経験面
- 簿記を持っていること
- その他経理に役立つ資格を持っていること
- エクセルが得意なこと
- 経済・経営・税法について学んでいること
- 英語能力があること(外資系の場合)
- データ分析力があること
- 経理の経験があること
- 一般事務・総務等の経験があること
- 単純作業を正確に、スピーディーにこなす能力・経験があること
資格面では、何よりも簿記を持っていることを必ずアピールしましょう。実務的には3級でも対応できますが、履歴書上は2級を持っているとより効果的です。また、PCは使えて当然ですが、エクセルを使いこなせると好印象です。さらに、経理は「経営」に関わる数字を管理するため、経営、税法の知識、データ分析の能力があることをアピールできると、他の応募者に差をつけることができます。
経験のある場合には、即戦力になりうることをアピールしましょう。職務経歴書に記載することはもちろん、キャリアアップのために転職する旨をうまく伝えられると効果的です。
性格面
- コミュニケーション能力があること
- コツコツ続ける根気があること
- 問題解決能力に優れていること
- 経営者視点に立てること(経営のために数字を管理するため)
- 経理=専門職ととらえていること
経理を続けるためには、コミュニケーション能力と根気が必要です。前職、アルバイト、サークル等でコミュニケーション、調整能力に長けていた点をアピールできると効果的です。また、単純作業であっても黙々とこなせる根気強さも重要なPRポイントになります。
なお、経理はあくまで「専門職」です。そのため、経理を単なる事務職と考えていると、マイナス評価になってしまいます。正確な数字の管理が経営を左右すること、その重要性を理解していることをアピールしましょう。
また、「その重要性から経理に魅力を感じ、簿記を取得した」というように、資格面へと話題をつなげ、本気度をアピールするのも効果的です。
こんな人を雇いたい!プロの経理から見た理想の人物像
経理に理想的な人物というと、簿記を含め経理や会計、財務の知識が豊富な人物を思い浮かべますよね。
もちろん、そういう人も優秀だと思いますが、私の考える理想的な人物は、
当たり前のことを当たり前にできる人
です。
「そんなの当たり前じゃんっ!」と思われるかもしれませんが・・・いやいや、その「当たり前」の人が、世の中にはなんと少ないことか(笑)。採用面接をしていても、滅多に出会えないくらいです。
確かに能力やスキルの優れた人は立派ですが、それ以上に、
- 人の話を素直に聞く
- スケジュールを守る
- 責任をもって最後までやる
こういう人の方が、経理に限らず、あらゆる場所で重宝されます。また、上司も安心して仕事を任せられますよね。
もし私が面接官であれば、優れた能力や経験よりも先に、「いかに社会人として当たり前のことができるのか」という点をアピールしてほしいと思います。それをクリアして、はじめて経理としての適性を見極めるはずです。
たとえば、面接時の対応でも、こちらの話に素直に、熱心に耳を傾けてくれる人は、それだけで評価が高くなります。
また、経理の経験がないとしても、前職で難しい仕事に取り組み、問題を解決しながら最後までやり抜いた話をしてくれたら、「この人なら責任をもって仕事をしてくれそうだな」と判断するかもしれません。
繰り返しますが、会社が重宝する人物は、
- 人の話を素直に聞く
- スケジュールを守る
- 責任をもって最後までやる
こういう「当たり前のことを当たり前にできる」人です。
もしあなたのもとにこんな後輩がやってきたら、「この子・・・可愛いな・・・よしっ、この子の面倒は私が見てやろう!」っていう気になりますよね(笑)。これはつまり、「一緒に働きたい」と思わせる人物ということではないでしょうか?
経理として優れていることも大切ですが、まずは社会人として優秀であることを伝えるほうが、採用面接では大切かもしれません。
これから就職活動・転職活動をする人は、そんなことを頭の片隅にでも入れておいてもらえると、役立つ時が来るかもしれません(^^)
経理の求人・転職事情は分かりましたか?
それでは最後に、具体的な経理の仕事内容について紹介します。
かなり細かい内容も含まれているため、(就職が決まっている方は)予習に利用する、または流し見するくらいで大丈夫です!
経理の仕事内容
経理のもっとも基本的な仕事は、「お金の動きを記録すること」だとお伝えしました。
これだけ聞くと単純そうに感じますが・・・もちろん、実際の現場はもっと複雑です(^^;
というのも、会社ではほとんどすべての業務に「お金」が関わります(商品を売る、材料を仕入れる、給料を払うなど)。そのお金の動きをすべて把握するとなると、結果的にものすご~い量になっちゃいますよね・・・。
代表的なものを挙げるだけでも、次の通り(理解できなくてOKです)。
- 売上の管理(売掛金の管理)
- 仕入れの管理(買掛金の管理)
- 現金・預金の管理
- 資産の管理
- 給与の計算
- 税金・保険料の計算・納付
- 月次・年次決算
なんのこっちゃよく分からないですよね・・・。
でも安心してください!
業務はたくさんありますが、基本的には「入社後」に覚えるものばかりです。
また、最低限知っておきたいことやそれぞれの具体的な仕事内容は、この後しっかり紹介するので大丈夫ですよ(^^)
毎日の仕事
それではここから、実際の経理の業務を紹介します!
前述のように、経理の仕事は会社の規模によって異なります。そのため、こちらの記事では一般的な中小企業を基準に、毎日・毎月・毎年の仕事をお伝えしますね。
※簿記の基本的な説明は省略させてもらいます(3級程度の知識があれば十分理解できます)。
では、まずは経理の「毎日の仕事」からはじめましょう! 経理の1日のスケジュールは、主に次のようになっています。
実際は、上記に毎月・毎年の仕事が加わることになりますが、とりあえず、ほぼ毎日必ず行う業務を確認しておきましょう。
出社~スケジュールチェック
出社してパソコンを起動したら、まずはスケジュールをチェックします。特に、その日の入出金予定(振り込み、引き落とし、支払いなど)を確認しておきましょう。
メールチェック
メールは必ず朝一で確認。とくに取引先からの連絡を見逃さないようにします(取引先からのメールは、ほぼ間違いなくトラブルの報告なので…)。
また、取引先や営業から「振込が遅れる」「支払いが早まった」などの連絡があった場合には、その場でスケジュールに追加します。「あとでやる」は厳禁です。
手提げ金庫の準備
業務開始前に手提げ金庫を準備しておきます。ちなみに、暗証番号は経理しか知りません。くれぐれも暗証番号を人目のつくところにメモしないように注意しましょう。
手提げ金庫の現金確認
手提げ金庫を開けたら、金種表(※)と金庫内の現金の数があっているか確認します。現金の数は終業時にも確認していますが、念のため朝一でもチェックします。
※金種表・・・それぞれの紙幣・硬貨の数を記した表のこと。上の画像がまさに金種表です。
現金出納業務
経費精算や仮払いなどで現金を動かしたときは、現金出納帳に手書きで記載します。あとで仕訳をしやすいように、勘定科目もしっかり書いておきましょう。
証ひょうは基本的にレシートでOKです。もしレシートがない場合は、代わりに出金伝票を残しておきましょう。会社によっては「レシート+出金伝票」の2つ1組で保管するところもあります。
仮払いの場合は通常仮払い申請書を用意するため、そちらを証ひょうとして預かります。
ちなみに、現金の対応が迫られるのは、基本的にイレギュラーな状況なので、あまり頻度は多くありません。
預金の確認
昔は銀行に行って、残高確認、振込、現金補充などをしていました。でも最近はインターネットバンキングを利用する会社が多いので、銀行に足を運ぶ機会はだいぶ減っています。
インターネットバンキングを利用できる場合は、業務開始時に一度残高の確認をしておきましょう。緊急の振込案件等があれば、その都度対応します(振込もネット対応可)。
仕訳
現金出納帳や預金の動きがあった場合は、仕訳をします。仕訳には会計ソフトを使うのが一般的です。
会計ソフトを使う場合も「簿記」は必要ですが、3級程度の知識があれば十分です。
細かい勘定科目のルールは会社によって違うため、入社後に確認すれば問題ありません。一応、代表的な勘定科目を後ほどまとめておきます。
総勘定元帳、その他帳簿類への記録
会計ソフトを使うと、仕訳帳に記入するだけで、総勘定元帳や補助簿(現金出納帳、預金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳など)に自動転記してくれます。便利な世の中になりました^^
そのため、総勘定元帳や補助簿について、特に必要な作業はありません。
念のため、会計ソフト上の「現金出納帳」「預金出納帳」と、現実の「現金出納帳」「通帳」の数字が一致しているか確認しておきましょう。
※書籍を読むと、補助簿や伝票がたくさん登場しますよね。でも、会計ソフトを使っている会社では、(もちろん会社によりますが)補助簿も伝票もめったに使いません。使用する可能性があるのは、せいぜい「現金出納帳」と「固定資産台帳」くらいです。
銀行業務
15時が銀行振込の締め切り時間なので、それを目安に銀行業務を行います(ネット対応可)。
振込が必要な場合は15時までに済ませます。振込等がない場合も、必ず残高を確認しておくようにしましょう。
現金補充が必要な場合は銀行へ行き、ついでに通帳記入もします(これだけはネット対応不可)。
なお、ATMの利用には暗証番号が必要ですが、暗証番号を共有してもらえないこともあります。その場合は、振込依頼書などを用意して窓口で処理してもらうため、時間にゆとりを持つようにしましょう。
※ちなみに、簿記の試験ではたびたび「小切手」や「手形」が登場しますが、使用頻度はかなりレアです。「長年経理をやっているけど、小切手は一度も見たことがない」という人も結構います。
書類整理・保管
請求書や引落明細書を整理してファイリングします。とくに当月末の支払いが必要な請求書は、まとめて分類しておくようにしましょう。
現金残高確認・現金実査~退社
予定の時刻(通常18:00~19:00くらい)になったら、現金出納業務を締め、残高を確認します。実際に現金の数を数え(現金実査)、金種表に記録します。
現金の確認が取れ、手提げ金庫を返却したら、その日の業務は終了です^^
以上が、経理の「毎日の仕事」になります。これだけ見ると、かなり暇そうですよね(笑)。
でも、前述の通り、実際はこれに毎月・毎年の仕事が加わることになります。
というわけで、つづいて経理の「毎月の仕事」を確認してみましょう!
毎月の仕事
経理の毎月のスケジュールは、主に次のようになっています。
初めて聞く単語や業務がたくさん出てくるかもしれませんが、「へぇ、こんな仕事があるんだぁ」となんとなくイメージできれば十分です^^
では、それぞれの業務を確認してみましょう!
在庫の確認、実地棚卸
「商品」のある会社では、月初に実地棚卸(在庫の数量を実際に数えること)をして、在庫確認をします。
大量の商品を扱う会社の場合は、けっこう大変な作業になります(^^;
売上代金の請求(請求書の発行、送付、仕訳)
取引先と契約書を交わすだけでは、売上代金を支払ってもらえません。というわけで、前月分の契約書をもとに、請求書を発行します。請求書は毎月5~10日までに送付するようにしましょう(なるべく早く送付するように心がけます)。
「売上」の仕訳は、請求書発行のタイミングで行います(会社によっては、契約書を交わしたタイミングで仕訳をすることもあります)。
なお、仕訳の「日付」は仕訳作業をした日ではなく、契約書の日付を入力するようにしましょう(あくまで前月分の売上なので)。
源泉所得税、住民税の納付
会社は毎月10日までに従業員の源泉所得税と住民税を(従業員の代わりに)納付する義務があります。
なお、住民税の税額は市区町村が計算してくれますが、源泉所得税の税額は会社(つまり経理)が計算しなければなりません。
住民税 | 計算不要 |
---|---|
源泉所得税 | 経理が計算 |
社会保険料 ※のちほど登場 |
計算不要 (従業員負担分は経理が計算) |
労働保険料 ※のちほど登場 |
会社負担分・従業員負担分ともに経理が計算 |
住民税
毎年1回、各従業員の住んでいる市区町村から12ヵ月分の住民税納付書が届くので、該当する月の納付書を切り取って納税します。
住民税の税額は前年の給与(後述の給与支払報告書)をもとに市区町村が計算してくれるので、経理が計算する必要はありません。納付書を金融機関へ持っていき、支払うだけでOKです。
住民税を支払ったら、仕訳を行います(納付書は各従業員宛に送られてきますが、仕訳は市区町村単位でまとめて行います)。
源泉所得税
毎年1回、12ヵ月分の納付書が税務署から届きます。ただし、源泉所得税の税額は空欄になっているので、経理が計算しなければなりません。源泉所得税額は通常、国税庁の発表する「源泉徴収税額表」をもとに計算します(各従業員の給与に該当する税率を掛けて計算する)。
でも!ありがたいことに、実際は給与計算ソフトが源泉所得税額を自動計算してくれるので、経理が手計算する必要はありません^^
※念のため何人かピックアップして、源泉徴収税額表と照らし合わせながら、計算が合っているか確認します。
住民税の場合は従業員一人ずつ納付書が届きますが、源泉所得税は会社単位で(つまり従業員全員分をまとめて)納税します。給与計算ソフトを使うと、各従業員だけでなく、従業員全員分の源泉所得税額まで計算してくれるので、納税額を納付書に記載し、金融機関に持っていくだけでOKです。納付したら、仕訳をします。
※「所得税」は本来、各個人が1年間の給与所得をもとに算出し、納税するものです。でも会社員の場合は、会社が毎月の給与から天引きし、従業員の代わりに納税することができます。このように、従業員の給与から所得税を天引きすることを「源泉徴収」といい、源泉徴収した所得税のことを「源泉所得税」と呼びます。
給与計算と振込、源泉徴収、社会保険料、雇用保険料の計算
「給与計算」とは、基本給に手当や交通費などを加算し、また源泉所得税、社会保険料、労働保険料などを差し引いて、最終的な支給額を算出することを指します。
給与計算は主に次のような流れで行われます。
- 給与計算ソフトに勤務データ等を入力
- 支給額の自動計算
- 給与明細一覧表をチェック
- 振込予約
- 給与の仕訳
- 明細表の配布
- 給与振込の仕訳
1. 給与計算ソフトに勤務データ等を入力
まず、総務(労務)から各従業員の出勤日数、出勤時間、有給取得数、基本給、各種手当、扶養家族、配偶者等をまとめた一覧表を渡されるので、それらの情報を給与計算ソフトに入力します。
※場合によっては経理が勤務状況をまとめることもありますが、そうなるとかなり大変です(^^;
2. 支給額の自動計算
給与計算ソフトに必要な情報を入力すると、
基本給や手当に加え、
- 源泉所得税
- 社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金)
- 雇用保険料
もすべて自動計算してくれます!
※念のため、数名分をランダムに選び、手計算をして数字を確認します。各種税金・保険料の計算は、ネットに公開されている税額表をもとに計算できます。
3. 給与明細一覧表をチェック
全ての入力を終えると、給与計算ソフトの「給与明細一覧表」に従業員全員分の給与が表示されます。一覧表をプリントアウトして、確認担当者(通常は上司)にチェックをしてもらいます。
4. 振込予約
給与明細一覧表のチェックが終わったら、今度は給与計算ソフトを使って「振込一覧表(全従業員の支給額と振込先を一覧にしたもの)」をプリントアウトします。一覧表の情報をもとに、インターネットバンキングで振込予約をします(ネット対応していない場合は、銀行で振込手続きを行います)。
5. 給与の仕訳
予約が完了したら、仕訳を行います。給与はあくまで「前月分」のものなので、仕訳の日付は「前月末日」にします。
6. 明細表の配布
給与計算ソフトを使って「給与明細書」をプリントアウトし、従業員に渡せるように準備しておきます。支払日になったら、従業員に渡します。
7. 給与振込の仕訳
振込が完了したら、仕訳を行います。なお、振込に関する仕訳は、振り込まれた日付を入力します。
経費精算
給与計算と同時に経費精算を行います。経費は給与と一緒に振り込むか、もしくは給与支払日に現金で手渡しする場合があります。
まずは毎月10日までを目安に、各従業員に前月分の経費精算書と証ひょう(レシート、領収書、交通費精算書など)を提出してもらいます。 念のため、経費精算書の数字が間違っていないかチェックしましょう。
経費精算書が集まったら、仕訳を行います。
※経費精算書とレシートを併せてファイリングしておきます。
経費精算分の金額も給与計算ソフトに入力しておくと、従業員全員分の経費精算費(立替金)を算出できるので便利です!
買掛金や未払金等の支払い
仕入れなどにもとづく買掛金や未払金等の支払いを行います。
まずは取引先から送付された請求書をエクセルなどで一覧表にまとめます。それから上司に一覧表の内容をチェックしてもらい、問題がなければインターネットバンキングで振込予約をします。
社会保険料の納付
社会保険料には、
- 健康保険料
- 介護保険料(40歳以上の従業員のみ)
- 厚生年金
が含まれます。
そして、各従業員の社会保険料は、会社と従業員がそれぞれ50%ずつ負担します。会社は従業員の社会保険料を毎月の給与から天引きし、会社負担分と併せて支払います。
社会保険料の納付方法は、毎月20日頃に金額の印字された納付書が届くので、それを金融機関に持っていけばOKです。支払いを済ませたら仕訳をします。
※社会保険料は、算定基礎届(後述。簡単にいうと従業員の月給を一覧にしたもの)をもとにすでに計算されているので、経理が算出する必要はありません。経理が計算するのは、給与から控除する各従業員の社会保険料負担分のみです(前述のように、これも給与計算ソフトが自動計算してくれます)。
月次決算、資金繰り表作成
「月次決算」は、簡単にいうと「年次決算」のミニバージョンです。月次決算は、義務ではありません。でも、月次決算をしておくと、年次決算がかなり楽になるので、やっている会社が多いんです(^^)
月次決算には、主に次の内容が含まれます(年次決算とほぼ共通)。
① 現金・預金の残高チェック
現金・預金残高の確認は毎日行っているはずなので、月末の段階でズレがなければOKです。
② 売上に漏れないかチェック
売上の計上漏れがないか営業にチェックしてもらいます。
③ 売掛金の回収ができているかチェック
仕訳帳(売掛金)をもとに、前月分の売掛金をすべて回収できているかチェックします。
未回収があったら、まずは営業に確認し、営業が状況を把握していないようであれば、先方に確認します。お金のトラブルは取引先との信用問題に関わってくるため、いきなり取引先に連絡する前に、必ず社内でしっかり確認を取るようにしましょう。
④ 買掛金が支払われているかチェック
仕訳帳(買掛金)をもとに、買掛金の未払いが残っていないかチェックします。
⑤ 立替金、未払金(給与・クレジットカード)、預かり金のチェック
立替金、未払金(給与・クレジットカード)、預かり金の残高に誤りがないかチェックします(未払金がゼロになっているはずなのに、会計ソフト上に残っている、など)。
⑥ 月次配賦(賞与、減価償却費、固定資産税、保険料、退職給付金、労働保険料)の仕訳
会社の支払う費用の中には、1年に1回または数回だけ支払うものがあります。たとえば賞与、減価償却費、固定資産税、保険料、退職給付金、労働保険料がそれに当たります。
でも、それらを費用計上すると、支払った月だけ異常に費用が増えてしまい、他の月との財務状況を比較しづらくなってしまいます。
そこで、特定の月だけ費用が増えないように、あえて12ヵ月に分散して費用計上することを「月次配賦」といいます。
ちょっとややこしい内容ですが、単純に「12分割して仕訳する」という認識でひとまずOKです。賞与、減価償却費、労働保険料の月次配賦については、のちほど紹介しますね!
⑦ 資金繰り表の作成
「資金繰り表」とは、簡単にいうと「現金(預金含む)の動きをまとめた一覧表」のことです。たとえば来月に回収できる売掛金がたくさんあっても、今月の買掛金を支払うための「現金」がなければ、会社は倒産してしまいます。
そこで経理は「資金繰り表」を作成し、現金がどれくらい残るのか、常に把握できるようにしておきます。
※資金繰り表のフォーマットは会社によって異なります。
⑧ 報告書にまとめる
月次決算によって明確になった財務状況を、報告書にしてまとめます。
以上が、経理の「毎月の仕事」になります。これらの業務が、経理のメインの仕事といえるかもしれませんね。
もちろん、いますぐに内容を理解する必要はまったくありません!イメージがつかめればそれで十分です^^
毎月実務を繰り返すうちに、3ヵ月もすればスムーズにこなせるようになるので、あまり心配しなくて大丈夫ですよ!
では、つづいて経理の「毎年の仕事」をザックリと紹介します!
毎年の仕事
経理の毎年のスケジュールは、主に次のようになっています。
年次決算
年次決算は、経理のメインイベントです!大変な作業・・・かと思いきや、実をいうと、基本的な流れは月次決算と同じです!
つまり、毎月の月次決算をしっかりこなし、仕訳帳がクリアになっていれば、特別にすべきことはありません。
あとは税理士に会計ソフトのデータを共有し、決算書(貸借対照表、損益計算書など)を作成してもらうだけでOKです。
確定申告・納税
税理士は会計ソフトのデータをもとに決算書を作ったのち、会社が支払うべき法人税(法人税・法人住民税・法人事業税)を算出してくれます。法人税は決算から2ヵ月以内に納付します。また、確定申告は税理士が代行してくれます。
賞与計算と振込、賞与支払届の提出
賞与にも源泉所得税や社会保険料が課税されます(世知辛い!)。社会保険料については、賞与の支払い日から5日以内に「賞与支払届」を提出する必要があります。
前述のように、賞与は「月次配賦」で仕訳をすることがあるので、念のため仕訳方法を確認しておきましょう。
※12ヵ月(賞与2回の場合は、それぞれ6ヵ月ずつ)に分割し、「賞与」の勘定科目で「費用計上」していきます。従業員に支払う賞与を「賞与引当金」として毎月積み立てていくイメージです。
社会保険料の算定基礎届の提出
社会保険料の「算定基礎届」とは、社会保険料を算出するために、各従業員の給与を報告するための資料です。
毎年6月中に書類が届き、必要事項を記入後、6/1~7/10までに提出します。
算定基礎届には、各従業員の4~6月分の給与と3ヵ月間の平均給与を記載するようになっています。
労働保険の申告・納付
労働保険料(労災保険料・雇用保険料)は、従業員の給与をもとに計算されます。でも、労働保険料は毎年1回、6/1~7/10の期間中に、同年分の保険料を納付することになっています。つまり、従業員の1年分の給与が確定する前に、保険料を納付しなければなりません。
そのため、会社はまず、申告・納付期間中に「概算」で労働保険料を納付します。そして翌年、ふたたび保険料を納付する際に、前年分の過不足を追加払い(または相殺)します。
※たとえば、2018年に10人分の労働保険料を納付。でも、その後に従業員が2人増え、計12人になったとします。この場合、2019年に納付するときに、2019年分の保険料に加え、さらに2人の2018年分の保険料を不足分として支払います。
なお、労働保険料には「労災保険料」「雇用保険料」が含まれますが、それぞれの負担割合は次のようになっています。
労災保険料・・・会社が100%負担。
雇用保険料・・・従業員と会社が一定の割合で負担。
※給与計算時に、雇用保険料を控除したのに対し、労災保険料の天引きがなかったのはこれが理由だったんですね。
労働保険料は1年に1回しか納付しませんが、前述のように仕訳は「月次配賦」で行います。ちなみに、労働保険は「前払い」をしているので、「前払費用」という勘定項目を使います。
中間税務申告
前期に20万円を超える法人税を納付した法人は、期首から半年後に中間税務申告・納税をする必要があります。
年末調整
所得税は本来、1年分の所得から扶養控除、配偶者控除、生命保険控除、住宅ローン控除などを差し引いて計算します。でも源泉所得税は毎月納付する必要があるため、「概算」で前払いをすることになります。
そのため、1年の終わりに改めて給与や控除分を考慮し、最終的な所得税を計算し直さなければなりません。これを「年末調整」といいます。
年末調整の結果、過払い(不足)が発覚した場合は、12月~1月分の給与で精算します。
年末に↑こういう用紙を渡されたことがあるかもしれませんが、まさにこれが、年末調整に必要な資料です。
この資料の情報を給与計算ソフトに入力すると、年末調整分を自動計算してくれます。
給与支払報告書の提出
市区町村が従業員の住民税を計算するために、従業員の住んでいる市区町村に対し、「給与支払報告書」を提出します。給与支払報告書には各従業員の前年の給与総額を記載し、1/31までに提出しなければなりません。
法定調書の提出
「法定調書」とは、従業員に支払った給与等に関する情報をまとめた書類のこと。毎年1/31までに税務署に提出する必要があります。
償却資産報告書の提出
減価償却資産を所有している場合は、「償却資産報告書」に減価償却資産の取得価額などを記載して、1/31までに提出します。
減価償却費の費用計上
「固定資産」は文字通り「資産」ですが、資産としての価値は年々減少していきます(家や車も、古くなれば当然価値は下がりますよね?)。この減少分を「費用」として計上することを「減価償却」といいます。
減価償却費は年度末に1回だけ計上しますが、月次配賦して12ヵ月に分散することもあります。
なお、固定資産の残額は仕訳帳だけでは管理が難しいため、「固定資産台帳」に別途記録している会社が多いようです。
※たとえば144万円の普通自動車を購入した場合。普通自動車の耐用年数は6年(6年間で資産価値がなくなるように計算する)。この場合、毎年24万円ずつ減価償却費として費用計上することができます。また仕訳上は月次配賦をするので、1ヵ月当たり2万円で費用計上することになります。
以上が、経理の主な「毎年の仕事」になります。
未経験者は毎日の仕事をきっちりこなす
経理の仕事をアレコレとまとめてみましたが、一度にすべてを覚えて、実行に移すのは無理があります。特にまったくの未経験者にとっては、イメージすることすら難しいはずです。
そのため、まずは毎日の仕事からきっちりこなすことに集中しましょう。そもそも、難しい仕事をいきなり初心者に任せることはありません。経理の仕事はルーチンワークが多いので、少しずつ、確実に身につけていくようにすれば、きっと予想より早く仕事に慣れると思いますよ^^
経理の繁忙期はいつ?
経理の繁忙期は、「年末」と「決算期」です(※)。
「年末」は従業員の年末調整があり、しかも猶予期間が短いため、かなり忙しくなります。
また、「決算期」は文字通り「年次決算」が控えているため、場合によっては残業が続く可能性もあります。
ただ、それ以外の時期は比較的ルーチンワークが多いので、慣れてくればそれなりに余裕のある日々を過ごせるはずです。
※もちろん「年末」と「決算期」以外にも、6~7月の算定基礎届など、突発的に忙しくなる時期はあります。
経理の仕事は忙しい?
「毎月の仕事」のスケジュールを見ると分かるように、経理の仕事は月初と月末に集中します。これに繁忙期が重なると、正直・・・なかなかの激務になります(^^;
その反面、繁忙期以外の時期、とくに月半ばは、あまりやることがないので、けっこう暇です。飲み会をするなら、月半ばがオススメです(笑)。
守秘義務について
経理は一般的な事務職と決定的に違う部分があります。それは、会社のあらゆるお金の動きを知っているということです。ボールペン1本の購入履歴から、会社の負債状況、社員全員の給与まで把握しています。さらに、場合によっては社員の家族の個人情報まで扱うこともあります。
そのため、経理の守秘義務は他の社員と比べ物にならないくらい徹底しています。意図的に情報漏洩をすればもちろん犯罪ですが、うっかり社外の人に漏らしただけで、一発解雇もあり得ます。飲み会で愚痴を言っただけなのに・・・なんて軽はずみも厳禁です! 経理を務める時は、くれぐれも守秘義務に注意しましょう。
よくある勘定科目一覧
勘定科目は入社後に覚えれば問題ありませんが、「コレだけ覚えておくと便利かも?」というものをいくつか紹介しておきますね!
資産のよくある勘定科目
現金 | 紙幣と硬貨。またはすぐに現金に換えられる小切手、手形、郵便為替証書など。預金とは区別するので注意。 |
---|---|
預金 | 金融機関に預けているお金。厳密には、「普通預金」「当座預金」などに分かれます。 |
売掛金 | 商品やサービスの代金を後から受け取ることができる権利のこと。主に商品やサービスの「売上」に対して使います。 |
前払金 | 手付金などを前払いした場合に使う勘定科目。 |
前払費用 | 本業とは関係ないサービスに対する代金を前払いしたときに使う勘定科目。家賃の支払いが代表的。 |
負債のよくある勘定科目
買掛金 | 商品や材料の代金を後払いする義務のこと。主に「仕入れ」に対して使います。 |
---|---|
預り金 | 「源泉所得税」や「社会保険料」などを天引きするときに用いる勘定科目。 |
未払金 | 本業とは関係ない商品やサービスの代金を後払いする義務のこと。水道光熱費などの請求書が届いたときに用いる勘定科目。 |
純資産のよくある勘定科目
資本金 | 会社を設立・増資したときの出資金のこと。 |
---|---|
繰越利益剰余金 | 毎年会社が蓄えてきた利益。一般家庭でいう「貯金」のこと。 |
費用のよくある勘定科目
役員報酬 | 役員の給与に用いる勘定科目。従業員の「給与手当」とは分けて考えます。 |
---|---|
給与手当 | 従業員に支払う給与。 |
法定福利費 | 社会保険料や労働保険料のうち、会社が負担した費用。 |
通勤交通費 | 通勤に発生する交通費。会社によっては、勤務中に発生した交通費をすべて含めることもあります。 |
消耗品費 | 使用期間が1年未満、または10万円未満(「少額減価償却資産の特例」があるため、中小企業の場合は30万円未満)の備品にかかった費用。ボールペン、コピー用紙、テーブルなど。会社によって、「備品費」「事務用品費」など細かく分類する場合もあります。 |
地代家賃 | 家賃や倉庫、駐車場などの料金。 |
租税公課 | 公的な手数料の支払いで発生した費用。領収書の印紙の費用など。 |
減価償却費 | 減価償却時に発生する費用。 |
通信費 | 電話、インターネット、郵便・宅急便などで発生した費用。 |
水道光熱費 | 電気代、水道代、ガス代など。 |
会議費 | 会議で利用した会議室の利用料や会議で提供した食事代など。1人当たり5,000円を超える場合には、交際費に分類されます。 |
交際費 | 接待や贈答品などにかかった費用。 |
支払手数料 | 銀行の振込手数料など。 |
収益のよくある勘定科目
売上 | 商品の販売やサービスの提供など、本業で得た収益のこと。 |
---|---|
受取利息 | 銀行や国債などの利息のこと。 |
いかがでしたか? 経理のイロハはお分かりいただけましたか?
この記事が経理の仕事や就職・転職活動で悩むあなたのお役に立てたら嬉しいです!
お相手は、トリセツ編集部の鳥居でした^^
それでは、またお会いしましょう!